アイツ

あーアイツ死んでくんないかなぁ。
そしたら何もかも悪いこと終わるのに。
アイツが生きてるから、アイツがいつまでも生きてるつもりでいるから俺は苦しいんだ。

アイツはずるい。
俺はアイツを捨てることができない。
もし仮に捨てることができても、その俺には何も残っていない。
怖い。
もとより、俺は何も持ってない。
流麗な容姿もない。
屈強な身体もない。
豊富な財力もない。
カリスマ性もない。
音楽センスもない。
やさしさもない。はげしさもない。
ようやく気付いたが、少しはあると思っていた知能もなかった。
だから常に発言に気を配る。
他人に頭の悪さを見抜かれないように。
他人に少しでも頭がいいと思わせるように。
そのせいで他人は俺が頭がいいと勘違いする。
「お前は頭がいいから、やる気になれば」
「お前はいつかきっと」
いつしか、自分で自分が賢いのかどうかもわからなくなっていた。

でも、それはアイツも同じ。
アイツも何も持ってない。
それでも、俺はアイツだけを見るしかない。
アイツの言いなりだ。
逆らうことは、アイツを失うこと。


それならいっそ


俺が


アイツを















お前のことだよ、俺。